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ジョニとミシュの旅

電車に揺られながらジョニはメモを見ている。
車内は空いていたので窓際からゆったり外を眺められた。
よく晴れていて、空はばっと雲がまいてあるだけで青かった。
遠くにゴルフの打ちっぱなしが見える。小さく鳥が群れてその上を旋回していた。

もしもし、ジョニ。金子だけどこの三日間忙しくて返事が遅くなってしまった。あと、半年前まで日本にいなかったんだ。何も言わなくて申し訳ない。また電話ください。
前日と前々日に一年、たぶんそれ以上ぶりにだがジョニは金子に電話をかけた。何度かけてもつながらなかったとき、ミシュがいなくなったころ同じようだったのを思い出して半ばあきらめていた。
それが朝、起きぬけに入れられていた留守電の名前を見て、ジョニの眠気は一気に覚めた。
今朝は久し振りに金子と話したせいか、電車に乗っている今もジョニの耳に金子の声が貼りついている気がする。

駅からメモを頼りに歩いて、途中コンビニによって缶コーヒーを買う。
信号を数えながら大通りを歩いた。大学の周辺とちがって背の高い建物ばかりで車も多く走っていた。
指定された路地へはいると予想より狭くて、はじめここでいいのかジョニは戸惑ったが、タバコ屋の向かいに目当ての建物は見つかった。
鉄筋コンクリートの6階建てビルで、壁が大きなオフィスビルの影に隠れて濡れたように暗い。
むきだしの階段を上って2階の扉の前に立った。乳白色の重そうな扉にはインターフォンがついていない。ひとの気配が感じられなかったが思い切ってノックした。
しばらくして空けられた扉から顔を出したのは金子だった。
「おお、髪切ったのか。メキシコ人」
「せめてヨーロッパにしてほしい」
「迷わなくてよかった。久し振りだな」
笑う金子は髪が長くなって、あごひげを生やしていたが昔のままだった。
挨拶もそこそこにしてあげてもらった。
右側にトイレと風呂があって、部屋は正面にあった。
部屋に通されると入ってすぐのソファに向かい合って座る。
外から見るより建物の中は明るく清潔で、ふた部屋ぶち抜いてあった。日差しが入り込んで家具が柔らかい色をしている。
小さな流しとソファやテーブルがあり、ここは簡単な応接室らしい。
ジョニの買ったコーヒーを開けて、お互いの近況を少し話した。
「すごい量の本だね」「仕事で使うんだ。どこになにやったかよく忘れて困ってる」
間仕切り代わりのブラインドが上がっていて隣の部屋がよく見えたが、コンクリートの床が先までのびていて奥行があった。
打ちっぱなしの壁の前にはたくさん本が積まれて壁のようになっている。
金子は噂に聞いたとおりの生活をしていた。ひとつだけ違ったのは、それは金子の努力だというところだ。
「あれから海外を歩き回って制作に打ち込んだ。それから思い切って売り込んでみたんだ。ほかは全部だめだったけど。ちょうど半年くらい前帰国してきたところで、やっと今の会社が採用してくれた」
金子は以前働いていた会社の取引先に、デザイナーとしていまは勤めているらしい。おかげで営業に来る先輩に会いづらい、と贅沢な悩みをこぼした。
「給料はそんなに変わらないけど、忙しくても断然今のほうが楽しい。で、なんで髪の毛黒色なの」
「なんとなくね」やっぱ金子すこし痩せたかもしれない。
「悪いけど頼まれたやつまだ探してなかったんだ、いまから探すよ」
金子は机にコーヒーを置くと、隣の部屋へはいって行った。冷蔵庫が小さく排気音を出し始めたのを一瞥すると、ジョニもそのあとについていった。
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