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ジョニとミシュの旅

部屋に入ると天井にファンがついていることに気がついた。
部屋の左側はほぼ全面が大きな窓で、ブラインドの隙間からぶつ切りにされた街が見えた。
正面には大きな木造りのデスクがおいてあり、パソコンやこまごましたものを上にたくさん載せていた。足もとにはいくつかキャンバスが立てかけてある。
右の壁際にはオーディオセットが本の山に囲まれてひっそり三角座りしていて、傍らには好きだったアーティストのCDが乱雑に積まれている。金子は積むのが好きなのだろうか。
試しに本の山から一冊開くと、アフリカの民芸品のものだった。
「ここにあると思ったんだけど、見つからないな」悪びれる様子もなく金子は頭をかりかりとかいた。
「自信たっぷりにあるって言ってたのに」本を戻すとジョニは金子を後ろから覗きこむ。
窓際に積まれた段ボールからがさがさと金子はミシュの手紙を探していた。
昔年賀状を実家からお互いに出し合ったときのものらしい。

その日の朝、まずはじめにジョニが電話で知らされたのは、ミシュとずっと前に別れたということだった。
ジョニへ届いた手紙にはほとんどミシュの身辺については書かれていなかったので、突然の告白に戸惑ってしまった。
「今でも時々連絡はとっている」と金子は続けた。どうやらミシュは岩手の実家で生活しているらしいが、元気だとしかいわなかったのでジョニもそれ以上きかなかった。
「みすずのことだろ」声と一緒にがさがさという音がするので、金子が部屋の中を歩き回っているのが分かった。
「二人とも突然いなくなってしまってとても心配したんだ。話をきこうにも連絡先も分からなくなってしまったし」
受話器越しだが、金子の申し訳なさそうな空気が伝わってきてジョニは内心驚いた。
「そうだジョニ、今日は暇か。いま会社の建物を一部借りて住んでいるんだけど、場所は教えるから来いよ。会って話そう」
午後からは出かける用事があった。だが金子の様子がいつもと違ったので、ジョニは金子に住所を聞いて会いにいくことにした。
ミシュの連絡先はその時にでも聞こうと思い、用事はまた別の日にでもすることにした。

さんざん探し回った挙句、目当ての手紙は別の段ボール箱から見つかった。
「でも実家にいきなり会いに行ったら、気持ち悪くないかな。ストーカーっぽい」
ソファの向かいに座る金子は丸い目をして驚いた様子だった。机の上にある焦げ茶の小ぶりな封筒には、ミシュの字で住所と名前が書いてある。
「だから大丈夫だって。みすずはジョニのこと気に入ってたからな、喜ぶよ。会ってやってくれ」
気に入っていた、という言葉にジョニは自分にだけ届いた手紙のことを思い浮かべ、少し照れくさくなった。その様子を見ていた金子は
「まあ実際は『ストーカーっぽい』というよりストーカーそのものだけどな」と意地悪く笑った。そう言われれば返す言葉もない。
「でも大丈夫だから。誰にも言わずにいなくなって、みすずも負い目を感じてると思うんだ」苦笑いするジョニに、金子はすまなそうに話した。
「それからこれ」金子から渡されたミシュの電話番号は実家のものだった。電話で聞いてはいたが、もうずっとミシュは携帯電話を持たないままらしい。
「でもこれ、みすずはめったに家にいないから意味ないよ。それに両親だって二人とも教師で、平日は夜まで誰も家にいない」
ミシュの両親が教師だなんて初めて知った。あまり自分のことは離さない人間だったので当然と言えば当然だが、住所の岩手、とか盛岡、とかいう字や、金子の話からはジョニの知らないミシュの気配が陽炎のように立ち込めているようだった。
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